一番は時間とお金がかかること。ただし、これは「よく咬めるようになる」「歯並びがきれいになり、笑顔がすてきになる」などといった、ご自身にメリットがあることのためのものですから仕方ないこと。
1.歯を動かすときに生ずる「痛み」
痛みの感じ方には個人差がありますが、通常は装置装着後から2~3日が痛みのピークで、食事の際に感じる事が多いです。
そのような場合には軟らかいものを食べるなど、食事の種類や食べ方を工夫なさるようお勧めいたします。
その後、数ヶ月は調節毎に若干痛みを感じる程度に落ち着いてきます。これは歯が動く時の正常な反応ですし、痛みはもとより違和感も次第になくなります。
どうしても痛みが我慢できないようであれば、鎮痛剤を服用していただく場合もありますが、痛みのためにリタイヤなさる方もいないので必ず乗り越えられるものです。
2.永久歯の抜歯、顎の手術
デコボコの量が多かったり、いわゆる出歯の状態の場合は永久歯を抜歯しないと歯がきれいに並ばない場合があります。
また、下顎の骨が大きく、受け口になっている場合などは顎の骨を切る手術を併用する場合もあります。
3.虫歯、歯肉炎、歯周病
矯正治療中は装置のまわりに、歯垢が溜まりやすい環境になります。
そのため、ブラッシングのポイントを押さえてしっかりとした歯みがきが必要です。
歯みがきを怠ると、装置の周りが虫歯になったり、状態によっては歯肉炎や歯周病にもなります。
治療途中に虫歯や歯肉炎をなってしまいますと矯正治療期間の延長も考えられます。
装置の下の部分が白く変色しています。
これは歯の脱灰といい、虫歯のなりかけの状態です。
矯正器具が着いていると、歯ブラシはすぐにだめになるので、マメに換えることをお勧めしています。
また、外で食事をする際などは、装置に食べ物がからまり、見た目にもあまり良いものではないので、携帯用の歯ブラシやフロスなどを持ち歩くことをお勧めします。
ただし、これは矯正している、いないにかかわらずのことですね。
4.口内炎
装置があたることにより、頬、唇また舌などに口内炎ができてしまうことがあります。
特に唇が乾燥していると、唇の皮が装置にすれてむけてしまうこともあります。
このような場合は、リップクリームなどを塗って、唇を乾燥させないなどの対応が必要です。
それでも良くならない場合は、ワックス(装置をカバーするもの)で対処していただくことになります。
ワックスは通常、矯正歯科医からもらえますので、その際に使用方法などはご説明があるかと思います。
また、口内炎用の塗り薬も有効です。
5.発音障害
裏側に装置が入る場合や、治療後に保定装置(リテーナー)を使用する際に発音しづらくなることがあります。
舌の大きさや発音の癖にもよりますが、主にサ行・タ行・ラ行に影響がでます。
これはお話する毎に慣れてきますし違和感としてもなくなります。
6.歯肉退縮
歯を動かすことによって歯肉が下がってしまうことがあります。
これは主に歯周病がある方や歯列のデコボコが強い方にみられます。
現時点で退縮してしまっている、または矯正の影響で退縮してしまった歯肉は、移植以外には元に戻りません。
7.ブラックトライアングル
歯がきれいに並んでくると歯肉と両隣の歯との間に三角形の隙間ができることがあります。
これは歯の形状が逆三角形に近い場合によくみられ、歯や歯肉には全く心配ありませんが、見方によっては歯肉が下がって見えたり隙間が閉じきってないように見えたりします。
8.歯髄炎
矯正治療中に歯の神経がしみることがありますが、これは一時的なもので通常は徐々に落ち着いてきます。
ただ、ごく稀に、歯髄炎のなかには神経が傷んでしまって歯が変色してしまうことがあります。
9.歯根吸収
稀に、矯正治療によって歯根が短くなってしまうことがあります。
健康な条件下で起こった場合には問題ありませんが、その後重度の歯周病を引き起こした場合には歯の寿命に影響することがあります。
ただし現在の矯正は弱い力で動くようになってきておりますので、以前ほど歯根への影響は見られません。
全体的に短くなってしまった歯根
10.顎関節症
全てのケースではありませんが、反対咬合が改善される時期や咬み合わせを作っている最中に上下の歯がぶつかって顎に負担がかかることがあり、その際に開口障害や顎の痛みなどが生じることがあります。
11.後戻り
矯正治療が終わり、お口の中の装置を除去した後、歯は元の位置に戻ろうとする傾向があります。
そのため取り外しの利く保定装置(リテーナー)で後戻りを最小限に抑えます。
歯の移動量や骨格などで個人差がありますが、装置除去後1年未満が最も後戻りしやすい時期で、それ以降は移動した場所に、徐々に落ち着いてきます。
いかがでしたか? 矯正治療に伴って、いろいろなことが生じます。
ただし、これらのほとんどは、事前に分かっていれば回避できることや、そうなっても一時的なことそしていずれ回復することです。
矯正治療を受ける際には、以上に挙げましたリスクをしっかりと把握し、専門医からのご説明を良く聞いた上で受診されることをお勧めいたします。
最後になりましたが、それよりも矯正治療をしないでいることのデメリットを考えてください。
それは、今ご自身が不自由に思っていることや、テレビや雑誌で見る人たちの口元がすてきだと思うことです。
さらに矯正治療をきっかけに、上記のような口内環境についても気をかけることで、美しいだけの歯だけではなく、健康な歯を永く保てることに繋がるのです。